世界貿易機関(WTO)

令和2年7月2日

 6月29日、世界貿易機関(WTO)、経済開発協力機構(OECD)及び国連貿易開発会議(UNCTAD)は、G20貿易・投資報告書を発表したところ、その概要は以下のとおりです。この報告書は、世界経済危機後、G20首脳からWTO,OECD及びUNCTADに対し、G20各国の貿易・投資措置につき報告するよう要請があったことを受け、2009年から半年ごとに作成されているものです。WTOが貿易部分を、OECD及びUNCTADが投資部分を作成しており、報告書の対象期間は、2019年10月中旬~2020年5月中旬です。 なお全文はWTOのホームページでご確認いただけます。

  1. OECD経済見通しによれば、新型コロナウイルス流行の第二波がある場合、2020年における世界GDPは7.6%減、貿易は11.5%減となり、2021年末においても、流行前のレベルを遥かに下回る成長率となる。一方、第二波がない場合、2020年における世界GDPは6%減、貿易は9.5%減となるものの、2021年末においては、流行前のレベルに近い成長率まで回復することが見込まれる。
  2. WTOの予測によれば、2020年における物品貿易は13%から32%の範囲で減少する。6月中旬時点のデータは、この範囲のうちの楽観的な数字とより整合している。
  3. 今回の報告対象期間中、G20においては154の貿易関連措置が新たに導入され、そのうちの93の措置が新型コロナウイルス関連の措置である。これらの措置のうちの約36%が5月中旬までに廃止されており、前向きな傾向が見られる。
  4. 投資については、国家の安全を脅かす投資に対してセーフガード措置を導入するための改革が多くの国で進められたことにより、2016年頃から停滞が見られていたが、今回の新型コロナウイスによりその傾向が加速している。各国政府が内向きの政策に陥ることなく外国投資を受け入れることができれば、外国直接投資(FDI)及び貿易は、経済回復を実現し、より強靭で持続可能な経済を構築するために重要な役割を果たすことができる。
  5. WTO、OECD及びUNCTADで行われている政策動向に対する緊密なモニタリング及び多国間での継続的な対話によって、新型コロナウイルスが貿易・投資にもたらすネガティブな影響を緩和できている。そして国際的な対話、協力及びモニタリングを継続的に行う必要性が、いまだかつてない程に高まっている。G20メンバーが、「自由、公平、無差別で透明性があり、予測可能な安定した貿易および投資環境を実現し、開かれた市場を保つ」とする目標にコミットし続けることが非常に重要である。
  6. 新型コロナウイルスの流行によりサプライチェーンの強靭性を確保する必要性が強調されている中で,国内回帰は必ずしも解決にはならない。一層の供給の多様性が存在する開かれた国際市場が,強靭性を生み出す。ある地域におけるショックを別の地域からの供給で埋め合わせることができるようになる。既存のWTO協定においても国家の緊急事態のための条項が含まれているが,WTO加盟国は,現下の新型コロナウイルスの流行のように多くの国が同時に影響を受けるような世界的な緊急事態に対応するため,新たな貿易ルールの必要性を考えるようになるかもしれない。

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